そこで伊邪那岐命は、伊邪那美命に会いたいと思って、黄泉国に追って行った。そして、伊邪那美命が御殿の戸から出迎えた時に、伊邪那岐命は、「いとしい我が妻の命よ、私とあなたが作った国は、まだ作り終わっていないから、帰ってきてくれ」と言った。すると、伊邪那美命が答えて言うことには、「残念なことです、早くいらっしゃらなくて。私はもう、黄泉国の食べ物を食べてしまいました。けれども、いとしい我が夫の命がここまでいらっしゃったことは恐れ多いことですから、帰ろうと思いますので、しばらく黄泉神と相談しましょう。私の姿を見ないでください」 こう言って、伊邪那美命は、御殿の内に帰って行ったが、その間がとても長くて、伊邪那岐命は待ちきれなくなった。そこで、左の御みずらに挿していた神聖な爪櫛の端の太い歯を一本折り取って、これに一つ火をともして、御殿の中に入って見た時に、伊邪那美命の身体には蛆がたかってごろごろうごめいていて、頭には大雷がいて、 胸には火雷がいて、腹には黒雷がいて、陰部には拆雷がいて、左手には若雷がいて、右手には土雷がいて、左足には鳴雷がいて、右足には伏雷がいて、合わせて八はしらの雷神が成っていた。
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《言葉》
- 【黄泉国】よもつくに 死者の赴く国
- 【黄泉神】よもつかみ 黄泉の国にいる神
- 【美豆良】みづら 古代日本の成人男子の髪型、長くした髪を左右に分けて耳元で結ったもの