そこで速須佐之男命はやすさのおのみこと天照大御神あまてらすおおみかみに、「私の心は清く明るいから、私の生んだ子は女子だった。これによって言えば、当然私の勝ちだ」と言って、勝ちに乗じて天照大御神の耕作する田の畔(あぜ)を壊し、灌漑用の溝を埋め、また大御神が新嘗の新穀を食べる御殿に糞をしてまき散らした。
 しかし、それでも天照大御神はそれをとがめだてせずに、「糞のようなものは、酔ってへどを吐き散らそうとして、我が弟の命はそうしたのでしょう。また、田の畔を壊して灌漑用の溝を埋めたのは、土地がもったいないと思って、我が弟の命はそうしたのでしょう」と善い方に言い直したものの、なおその悪い行いは止まず、ますますひどくなった。
 天照大御神が、神聖な機屋はたやにいて、神に献上する御衣を機織り女たちに織らせていたときに、速須佐之男命がその機屋の棟に穴をあけて、ぶち入りの馬を逆剥ぎにして落とし入れたところ、機織り女はこれを見て驚き、で女陰を突いて死んでしまった。そして、天照大御神はそれを見て恐れて、天の石屋いわやの戸を閉じて中にこもった。

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《言葉》

  • 【勝佐備】かちさび 「さび」は動詞「さぶ」(〜のようである、〜らしく振る舞う)で、「勝った者のように振る舞う」
  • 【新嘗】にいなめ 毎年秋に新穀を神に供し、また神とともにこれを食べることで収穫に感謝する行事
  • 【逆剥】さかはぎ 動物の皮を尾の方から頭の方へ逆向きに剥ぐこと
  • 【梭】ひ 横糸を巻いた管を収めた舟形の道具、機織りに用いる
  • 【天石屋戸】あめのいはやと アマテラスが籠った岩窟もしくは御殿の戸